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腎臓内科医の診療日記 No.69

日本の携帯電話市場におけるスマートフォン率は、2010年には4%程度だったのが、2023年の初めには96.3%になって、携帯市場の殆どをスマホが占めるようになった。スマホは電話というより高性能の小型コンピューターで、どちらかと言えば、電話以外の機能の方がよく使われている。他人と連絡をとりたい時は、通話でなくメッセージの方が相手の都合を気にせず送れるし、記録も残って便利なので、ラインなどのSNSアプリが急速に普及した。X(旧Twitter)やインスタグラムでは、世界中の人と手軽にいつでも意見を交わすことが出来るようになり、撮影した写真や動画を即座に共有できるようになった。

携帯電話がまだ普及していなかった学生の頃、当時気になっていた女の子の自宅の固定電話に電話をかけたら、聞き覚えのある声の女性が電話に出たので、普段どおり話し始めたら、その子の母親だった。私が電話をかける時は、会話の内容を家族に聞かれたくなかったので、10円玉をたくさん握りしめて、家の近くの公衆電話から電話をした。そんな、将来ひょっとすると走馬灯の一場面に出てくるような記憶が残っているのだが、今のSNS世代の若者の場合は、どんな青春の想い出が蘇ってくるのだろうか。ちなみに、走馬灯を見るような壮絶な最期を迎えるつもりは無い。

研修医として働き始めたころ、病院のスタッフ間の連絡は、まだポケットベル(=ポケベル)を使っていた。看護師が医者に聞きたいことがある時は、電話でその医者の呼出操作をして、一旦受話器を置く。ポケベルの呼出音に気づいた医者が近くの電話から応答操作をすると、呼び出した側の電話が鳴る。看護師が受話器を取ると、ようやく目的の医者と会話が出来るという仕組みだった。医者がポケベルをどこかに置き忘れていたり、近くに電話が無かったり、返事待ちの電話に別の電話がかかって来たりして、スムーズに繋がらない事も多かった。看護師も面倒なので、そこそこの用件じゃないと医者のポケベルを鳴らさなかった。数年してPHSが病院で普及すると、看護師から医者への問い合わせが飛躍的に多くなった。医者の指示を必要とする看護師は手間が減って喜んだが、医者の間では、ポケベル時代を懐かしむ声も多かった。

年末になったので、今年の旅先で撮影した写真入りの年賀状を作成して、一枚ずつコメントを書いてポストに投函した。ある意味で時代遅れのコミュニケーションツールになった年賀状の販売枚数は、激減しているそうである。日常的に遠く離れた知人と写真や動画、メッセージをやり取りする時代となり、手間暇かけて年賀状を送るのを面倒に思う人が増えているのだろう。ところで、私はX(旧Twitter)で自分の意見を発信した事はないし、インスタグラムに写真や動画を投稿した事もないが、このブログは書き続けていて、年賀状は毎年送り続けている。他人に理解して貰うのはほとんど諦めていて、怒る人がいたり、嫌われてしまっても仕方がないが、一方で、少しでも分かってくれる人がいたら、大変幸運な事だから、全力で感謝しようと思っている。