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腎臓内科医の診療日記 No.65

たんちょう釧路空港には、関西国際空港から2時間ちょっとかかって15時過ぎに到着した。昨年までのように、自分のバイクをフェリーに乗せて苫小牧に到着するとか、飛行機で新千歳空港に到着してレンタルバイクを借りるというパターンだと、北海道は広いので、他の場所を何箇所かまわった後に、旅の中盤から終盤くらいでようやく釧路に辿り着く事が多かった。始まりがいきなり釧路というのは初めてである。空港連絡バスで1時間弱かかって釧路駅に着くと、気温は25℃と名古屋に比べて低かったが、湿気がかなりあった。釧路は霧が多いことで有名である。霧が多い理由は、太平洋高気圧と黒潮(日本海流)と親潮(千島海流)が関係しているそうで、太平洋高気圧から吹き出した南風が、暖流の黒潮の上空を通過するときに温かく湿った風になって、北から流れてきた寒流の親潮に冷やされて霧が発生して、それが釧路に運ばれてくるのだそうだ。小学生の頃に学校で習って丸暗記した単語と40年ぶりくらいに再会して、なるほどと思った。タモさんは、教養があると楽しく遊べますよ、と言っているが、専門に偏って教養に欠けたまま生きてきた私は、旅をするようになって、その意味がわかってきた。もっと早くわかっておきたかったが、自分の人生はこういう風に仕組まれているのかもしれない。

釧路駅からは、JRの釧網(せんもう)本線で川湯温泉駅まで2時間弱かかり、そこからさらにバスに7〜8分乗って、18時半過ぎに屈斜路湖近くのライダーハウスにようやく到着する。20kgの重さの大きなスーツケースと一緒に、まだまだ長旅が続くなと思い、列車の発車するホームがどこか確かめるために案内表示板を見上げると、16:32の網走行き普通列車は、赤く大きな字で「運休」と表示されていた。なんじゃこりゃ。次の摩周行きの列車も運休である。これじゃ宿に行けねーじゃん、と思いながら駅員に事情を聞いてみると、ゲリラ豪雨で列車が止まっていて、その後の列車なら動きそうですとの事だった。釧路駅周辺は晴れているが、釧網本線は北海道の原野や山を幾つか走り抜けて、反対側のオホーツク海側の網走まで長距離を走っていくから、仕方がないのだろう。なんだか北海道らしい、想い出に残る旅のエピソードじゃないか。

宿に電話をかけて列車が遅れることを伝えると、「困りましたね、その時間になると駅からのバスがありません。タクシーも走ってないし、自分も外せない予定があるので、車で駅まで迎えに行くことも難しいです」との返事だった。宿泊料金は4000円弱と格安だが、その分サービスが期待出来ないのは仕方ない。川湯駅からはバスで数分だったので、歩けそうな距離かどうか聞いてみると、「え、4kmありますよ」との事だった。プールで泳ぐと1時間で1000mくらい、歩く場合は時速約4kmだから、早足で歩けば1時間弱だろうという単純な計算で覚悟を決め、「4kmなら最悪、歩きます」と伝えると、「暗いですから気をつけて下さい。お迎え出来ないかどうかもう少し当たってみますので、駅に着いたらもう一度お電話ください」との事だった。こーゆーパターンは、何だかんだ言って別の人が迎えに来てくれるだろう。巨大なスーツケースを駅のコインロッカーに預け、釧路駅の近くにある和商市場で、新鮮な海鮮ネタを自分の好みで色々選んでごはんに乗せる勝手丼とビールを注文し、遅めの昼食を済ませた。列車の発車までもう少し時間があったので、夕日の綺麗な幣舞(ぬさまい)橋まで散歩して、昭和感ただよう釧路の街をブラブラ歩きながら駅まで戻ってきて、18:52発の網走行き普通列車に乗り込んだ。