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腎臓内科医の診療日記 No.63

年をとったせいか、夜の食事は、適量のお酒と刺身などのつまみで済ませてしまうようになって、お米やボリューム感のあるおかずは食べなくなった。自分の家で過ごす時はそれで良いのだけれど、病院の当直の時には、ごはんとおかずの揃った食事が、ちゃんと用意されている。昔はありがたく全部食べていたのだけれど、最近は食べられなくなった。自分に出された食事を残すことが出来ない性分なので、おかずだけ食べて、ごはんはラップを持参して冷蔵庫で冷凍して持って帰ることにした。自分の病院の当直以外にも、別の病院の当直アルバイトもしているので、病院の隣に安く借りている部屋の冷蔵庫の中に、冷凍ラップごはんが定期的に補充されていくことになった。ごはんは、その部屋に泊まったときの朝食として食べる事にした。レンジで解凍しただけではあまり美味しくなかったので、炒飯を作ってみることにした。学生時代は自宅から大学へ通い、研修医になってからは食事を外食やスーパーの惣菜で済ませてしまって、そのまま結婚したので、自炊する機会がないまま年をとった。フライパンにご飯がこびり付いて、ベタベタの炒飯が出来上がった。

ある人がネットの投稿で、中年の危機の乗り越えるための重要な方法の1つに「自炊」を挙げていた。中年の危機は、心身や環境の変化が起こりやすい中年期に陥る不安定な心理状態の事で、男女問わず中年の80%が経験するとも言われていて、私もあの頃はキツかったという時期がある。私もそこを何とか乗り越えたように思うが、いろいろな情報や経験から、そういう危機に陥るメカニズムや対処法も、直感的にわかりつつある。乗り越えるために「自炊」も役に立つという意見を聞いて、確かにそうだろうと思った。そういえば昔、皆が未熟な学生の頃の仲間内でも、「普段から自炊している下宿生」は、それなりに安定感があった。最近、中高年男性が一人でキャンプや車中泊に行って、食事を作って食べている動画をよく見るけれど、登場する男性は充実感にあふれているし、実際に自分がキャンプでたき火をして、何か簡単に焼いて食べるだけでも、とても楽しい。自分の面倒を他人にみて貰うのではなく、まずは自分が自分自身の面倒をきちんとみる習慣を、具体的につくる。そのあたりが疎かになっていると、何かのきっかけで心理的危機に陥りやすい。そんな感じだと思う。

その動画はドラマとして作られた物だったが、キャンプ場で訳ありのオヤジがテントを張って一人で寝泊まりしていた。たまたま近くに、訳ありのキレイな母親と女の子が2人で慣れないキャンプに来た様子だったが、たき火も起こせないし、テントもうまく張れない。助けを求められたオヤジがたき火を起こしてあげると、母親はその火で2人分のカップラーメンのお湯を沸かそうとするが、それもうまくいかない。見かねたオヤジが大きな中華鍋をたき火の上に置き、慣れた手つきでレトルトご飯とあり合わせの具材を混ぜ合わせると、あっという間に絶品のパラパラ炒飯が出来上がった。シブいぜ…。動画をみて感動した私は、パラパラ炒飯の作り方をさっそくネット検索した。フライパンに油をひき、煙が出るほど十分熱してから、具材と解凍した冷凍ごはんを入れた。すると、ご飯はフライパンに焦げ付かず、前回よりパラパラの炒飯が出来上がった。ひょっとしたら料理は面白いのかも知れないと思った。もっと料理が上手になって、キャンプ場でキレイな母親と女の子が隣に来て困っていたら、格好よく助けてあげようと思った。「おやじキャンプ飯」で検索してください。