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腎臓内科医の診療日記㊾

一応、私はたぶん一般的なセクシャリティ感覚をもっていて、セクシャルマイノリティーも差別していないと思うけれど、最近、カッコいい高齢男性に憧れる事が多い。「アメリカン・ユートピア」という昨年公開された音楽ドキュメンタリー映画で、カッコよく歌って踊るデヴィッド・バーンの年齢を調べたら69歳だった。その映画の字幕を担当した音楽評論家のピーター・バラカンは今年70歳になっていて、以前から彼のラジオ番組をよく聴いているのだけれど、その選曲と解説はいつも最高だし、東京の恵比寿で彼が毎年主催しているライブイベントに足を運んで本人を見たときには、とても姿勢がよくて若々しかった。昨年太平洋ヨット横断を達成した66歳の辛坊さんの事は、コロナ騒ぎの最初からアホな専門家や政治家を鋭く批判しているのをみてファンになって、ニュース解説番組を聞くようになった。太平洋のヨット横断航海記も発売と同時に購入して持っていたのだが、出演するマリンイベントのトークショーに本を持って来ればサインするよ、とラジオで言っていたので、翌々日に新幹線に乗って横浜までサインを貰いに行った。3月末に、サンフランシスコから日本に向けてヨットで出航したレジェンド、堀江謙一さんの現在位置を調べたら、ちょうど日付変更線を通過したところだった。83歳になっても太平洋ひとりぼっち。とてもカッコ良い。

世界保健機関では高齢者は65歳からと定義されているので、先に名前を挙げた方々は皆、立派な高齢者=ジイさんである。どうでも良いが、サザエさんの波平さんの設定年齢は54歳でフネさんは52歳だそうだ。話を戻すが、私にとって魅力的なジイさんがどんな人かというと、自分のやりたい事を、ある意味でワガママにやり続けて、元気に楽しく生きている人たちである。皆が嫌がる事を我慢してやり続けて人から「感謝」されている人や、人との調和を考えて周囲に合わせて「平和に」生きている人ではない。好きな事をやって嫌な事は基本的にはやらない、場合によって人に嫌われたり批判されるのはやむを得ない。自分を嫌うのは人の勝手であって、好かれる事を期待しない。そんな風に考える人たちである。

一方で、日本には我慢を美徳として、各人の自己犠牲のうえに社会を維持させようという文化があって、日本人はたぶん、子供の頃からそういう事を尊ぶ教育を受けてきている。そんな環境で育ったせいか、本当の気持ちを抑圧して周りに同調して生きている人がとても多い。とくに真面目な人に多いと思うが、頑張って無理し続けて、自分の本当の気持ちがわからなくなってしまったり、精神安定剤を必要としたり、いつも何かに怒っていたり、怯えていたり、極端な場合は引き籠ったり、この世を去ろうとしてしまう人もいる。自分の周囲でもそういう事があったし、病院には精神安定剤を大量に飲んだ人が頻繁に救急車で運ばれてくる。自分もそれなりにいろいろあって、対処法については、そこらの専門家よりもたぶん詳しい。基本となる対処法は、自分自身の感情や、本当にやりたい事、本当はやりたくない事に敏感に気づけるようにしておく事である。人にはやさしく、自分にはもっとやさしく。普段から自分の感情や感覚、思考パターンを注意深く観察する訓練をしておいた方がよい。

そんな訳でヨットって面白そうだなと思って、近くで操船を学べる場所をネットで探してみたら、私が子供の頃にあまり良い意味でなく有名になったヨットスクールが、意外と近くでまだ営業している事がわかった。この年になってスパルタ教育は受けたくないゾ。私は中二病を引き摺ったまま年をとってしまっただけで、そこまでグレてはいないと思う。