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腎臓内科医の診療日記㉖

スウェーデンのCOVID-19の死者数が、現時点で3200人を超えている。スウェーデンの人口は1900万人なので日本の人口の6分の1にも満たないが、現時点の日本の死者数が657人なので、ざっと5倍の人が死んでいる。スウェーデンのコロナ対策の特徴は、最低限の注意喚起は行うが、都市封鎖や学校閉鎖、レストラン閉鎖などを行わずに出来るだけ従来どおりの生活をして、ウイルスに対して集団免疫をつくって乗り越えよう、という骨太の方針をとっていて、けっこう注目されている。ある程度の犠牲は覚悟の上である。ちなみに、このスウェーデンの死者数の人口比は、周辺国のそれに比べても、はるかに大きい。最近は、国内外から政策に対する疑問の声があがってきているようである。

ところで、日本の昨年のインフルエンザの死者数は、1年で3000人を超えていて、全世界では毎年20万人~50万人がインフルエンザで亡くなっていると言われている。一方で、現在のCOVID-19の死者数は全世界で28万5000人となっている。この辺のデータに基づいて、死亡率の高い国はともかくとして、少なくとも日本ではコロナウイルスに対するパニックを、愚かなことだとバッサリ切り捨てる人もいる。ネットでたまたま見つけたある有名人のブログでは、連日に渡ってコロナの恐ろしさを報道するテレビ番組を、国民に対する洗脳ビデオと言っていた。国民がヘッドギアをつけられて、教祖から洗脳ビデオを見せられているようだ、という内容の事が書いてあったと思う。そういう、国の見解や方針と大きく「異なる」意見を持った人たちは、実は元々結構いたのだが、騒ぎが大きくなるにつれ、沈黙したり、意見を変えたりしていった。そして、わずかに残って反抗を続けているタフな人が、主にネット上で発言を続けている。大変な騒ぎの中であるが、そのあたりのことは結構、興味深い。

数日前、COVID-19で死亡した看護師が世界全体で260人を超えているとの推計が発表された。亡くなった看護師たちは、どのような年齢分布なのだろうか。インフルエンザで死亡する看護師や医療従事者は、世界全体で毎年どのくらい居るのだろうか。目の前の状況に、必要に応じて直感的で迅速な対処をしながら、正しい情報が揃って正確に分析されるまでは、どちらか一方の思想に偏りすぎないように、自分を客観視しておきたい。自分の見解を疑わずに簡単に思い込んでしまう事によって、不必要に相手を責めて、余計なトラブルを生むことは結構ある。

自粛警察という言葉が、今年の流行語大賞にノミネートされそうである。広い意味での自粛警察は、いろいろな場面で遭遇する。最初は仲間だと思っていても、ゾンビに襲われた人のように、いつのまにか自粛警察に変わっている人もいる。自粛警察とは、ちょっと違う部分もあるが、映画「イージーライダー」のラストシーンを思い出した。ピーターフォンダとデニスホッパーが、2台のハーレーダビッドソンにのって優雅に大陸横断する映画を、衝撃のラストシーンまで含めて10代の頃から何度もみてきた。私もそのうち、横断してみようと思う。自粛警察との向き合い方は、結構大きなテーマである。