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腎臓内科医の診療日記㉒

正月早々、ゴーン元会長が元グリーンベレーの助けを借りてレバノンに逃亡したとか、イラン情勢が緊迫して戦争が始まるんじゃないかとか、結構なニュースが年末から年始にかけて賑わっているが、自分の周辺では大した事件もなく、大晦日の夜に病院の部屋のガラスが割られて、新年早々病院から電話がかかってきた話とか、元旦ツーリングで訪れた伊豆半島でかわいい女子高生のコスプレをしたオカマに騙された話とか、特に広がる話でもないので、他の機会にまとめた秋の学会の話にしておく。

学会に求めるものはヒトそれぞれだが、私は、慰安旅行的な要素は、結構あってよいと思っている。だから会場以外にも、積極的にその土地の文化を、若い先生たちと楽しむようにしている。ガイドブックはNHKのブラタモリの単行本がお勧めだ。旅の素人である私は、ブラタモリの本を片手に番組の足跡をたどりながら、その土地の歴史や文化を感じるのが、ここ数年のマイブームである。素人は、頑なに有名観光ルートを避けてヘンな自己満足に浸っているより、素直にプロのマネをした方が楽しめる。また一緒にいる若い人たちに、本に書いてあったことをそのまま解説すると結構面白がってくれるので、セコい優越感に浸ることも出来る。

学会前日の夜、高知へ向かう飛行機の便の待合室は、関連病院の腎臓内科医ばかりだった。名だたるエライ先生たちも、待合に鎮座していた。われわれ4人は、あまり深く考えずに飛行機の座席を個別に決めてしまっていたので、皆、エライ先生とは隣同士になりたくないね、とヒソヒソ話していた。ある意味、エライ先生はかわいそうである。幸い、その最悪の事態を回避できたのは、われわれの普段の行いが良かったのだろう。龍馬空港について、はりまや橋のホテルに荷物を置き、高知城の隣のひろめ市場で手ごろな店を選んで入って、早速酒盛りが始まった。たまたま既婚者ばかりの男女2人ずつで、私以外は自分よりひとまわり以上離れた若い先生ばかりだったので、ヨチヨチ歩きの小さな子供のいる幸せ家庭の話、ラブラブな新婚夫婦の話、夫と子供と一緒に居酒屋に行く仲良し家族の話を聞くことが出来た。ちなみに、私の同級生との新年会の話題は、ハンコーキとかカテーナイベッキョとかイシャリョーとかチョーテーとか、◎×☆△♡&…自主規制しておく。

滞在中、空いた時間に、レンタカーに乗り合わせて、西の方の海岸沿いにあるカツオの藁焼き体験工房に行った。藁で焼くだけかと思ったら、丸ごと一匹の銀色のカツオを5枚におろすところから始まった。5枚ってそういう意味だったのか、ふーん、と感心しながら棒の先についた網の上におろしたカツオを並べて、藁を燃やした炎の中に突っ込んだら、カツオのタタキが出来上がった。カツオは1匹の半分を4人で食べたら腹いっぱいになり、残りはクール宅急便で自宅や実家に送ることにした。私は、届いたら早めに食べるようにと、妻ではなくて娘のLINEにメッセージを送信した。藁焼き工房の隣に日帰り入浴の出来る施設もあったので、そこにも寄ることにした。男女2人ずつに分かれて風呂場に入ると、奥には露天風呂があり、その向こうには太平洋が広がっている。いい風呂だな、と思いながら同僚の先生と並んで体を洗っていると、壁の向こうから聞き覚えのある2人の女性の笑い声が聞こえてきた。高さ2.5メートルくらいの壁が男女の風呂場を隔てていて、その上は吹き抜けになっている。ふと、学生時代に何度も読んだ、歴史的名マンガ「行け!稲中卓球部」の抱腹絶倒の名場面を思い出した。銭湯で、前野と井沢が、壁の向こうの京子ちゃんと神谷さんに大声で話しかける、あの場面である。京子ちゃんは気が強い美人で、神谷さんはちょっと天然な美少女である。どちらがどうとは言わないが、キャラ設定も何となく似ている。こんなチャンスはめったに無い。さて、どうしたものか、と私は壁を見上げて、大きく息を吸いこんだ。