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腎臓内科医の診療日記⑪

もうすぐ、定期的にプールに通い始めて1年半がたつ。元々運動が嫌いだったので、この継続は奇跡的である。最近は行く頻度も増えてきたので、年間利用券を一括購入してしまった。これで後には引けない。今日も夜の透析回診の前に、スポーツセンターに行く予定である。

子供の頃、勉強は比較的できた方で、通知表はほとんどの科目で5段階評価中の5だったが、体育だけはいつも3だった。球技など特に苦手で、仲間内の野球では空振り三振やエラーばかりだったし、体育館では飛んできたバスケットボールが顔に当たってメガネが壊れるなど、実写版のび太くんだった。挙句の果てに、医者になって透析患者さんの回診をしていたら、一回りくらい年上の女性患者さんに、のび太くんというあだ名をつけられた。あだ名は関係がないが、とにかく体を動かしても気持ちよいと思わなかったし、習い事でやっていたスポーツも好きにはなれずに嫌々通って、すぐに辞めてしまった。だから運動嫌いの人の気持ちは、とてもよくわかる。疲れていたら、ゴロゴロ休んで体力を回復させよう、と考えるのである。

ところで医者になると、患者には運動を勧める。運動習慣が体によいと教科書にも書いてあるし、一般常識として誰でも知っている。ところが、働き始めて多くの医療スタッフと接してきて、運動習慣を持たない人が圧倒的に多いのである。医者なども私のように元々運動嫌いだった人もいるが、運動系の部活で活躍してきたのに仕事で忙しくなって、ほとんど運動しなくなってしまった人も多い。自分が間違いなく運動不足なのにもかかわらず、言うのはタダなので、軽々しく運動を勧める。そんな医者は、たぶんとても多い。

そんな私が、週に3日以上の水泳を1年半に渡って継続してきて思ったのは、間違いなく運動は体を変えるという事である。文字にすると当たり前で素通りしてしまうが、それを実感できるのは実際にやっている人だけである。最近は過剰な運動による逆効果も言われているし、狭心症や心筋梗塞のある人が無理な運動で症状が再発する事もあるので、自分に合った運動量という前提であるが、最初は軽い負荷から始めて、ちょっとずつ頑張るという事を続けていると、体は「良い」方向にかわっていく。体の変化は見た目でも脂肪が落ちたり筋肉がついたりするが、夜間寝ているときに体の奥深くの緊張がゆるんでくる感覚がわかるのは面白い。古いコリが緩んで逃げていくのがわかるのである。これが誰にでもわかる感覚かどうかは不明なのだが、たぶん3か月以上運動を続けて、自分の体を注意深く観察を続けているとわかってくるように思う。私の直感的な言い方で科学的ではないが、この体の緊張がゆるまずに蓄積されると、色々な病気として現れてくる気がする。水泳を続けても腎臓がよくなって透析をやめられる訳ではないが、病気の種類によっては、運動することによって薬や手術などよりも効果的に治したり、予防することが出来ると思うのである。

ちなみに、透析患者さんが水泳をする場合は、シャントの部分を清潔な防水フィルムで覆って、感染症や針穴からの出血を予防することが必要です。長そでの水着を着られる場合は、シャントが圧迫されないようなものを選ぶとよいでしょう。持病によって個別に注意することがあるかもしれないので、水泳や運動を始める前に、通院している施設の医師やスタッフに相談してみて下さい。