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腎臓内科医の診療日記㊸

娘①(高校生)が、家でスマホをいじりながら、学校で観ていた映画の続きをみると言った。学校で映画をいつ観ているのかと聞くと、昼食を食べる時に周囲の人と話してはいけないので、生徒はそれぞれ自分の机の上にスマホやタブレットを置いて、動画をみながら食べているのだそうだ。私が高校生の時の娯楽はというと、学校からこっそり抜け出して、マンガの週刊誌を近くの駄菓子屋まで買いにいって、授業中に机の下に隠して読んだりしていた。男子校だったので、近年コンビニで買えなくなってしまった雑誌も、一部で人気を博していた。トランプ式のカード麻雀も流行って、放課の時間(※授業と授業の間の時間。愛知県の方言なので、他の地域では通じない)になると、机を向かい合わせてゲームに興じ、たまに次の授業の開始までに片付けが間に合わず、カードを先生に没収された。後で返してくれる事もあったし、返してくれない事もあった。その後もしばらく麻雀中毒の状態が続き、大学時代は主に部室で麻雀をして過ごした。

娘②(小学生)の頬っぺたが白くなっていたので、白斑症(皮膚の色素が脱失して白くなる病気)にでもなったか、と思ってよくみると、白い部分がマスクの形になっていた。そんな娘②が来週から修学旅行に行く、と教えてくれた。数か月前には旅行の開催自体が危ぶまれていたので、行くことが出来て良かった。行き先は私が小学生の時の修学旅行先と同じで、泊まる宿も同じだった。そこは昔から修学旅行御用達の宿として有名なのだが、実は歴史ある施設の一部が旅館として開放されていて、部屋の窓からは風光明媚な庭園が眺められるらしい。小学生にその価値がわかるはずもなく、私も当時の事をまったく覚えていないので、もう一度泊まってみたい。出来ることなら娘の修学旅行に合わせて宿泊して、館内をウロウロしてみたい。

息子①は、相変わらず私と口をきかない。私が帰宅すると姿をくらます。前世では、余程の宿敵だったに違いない。よくある話なので、ジタバタしても仕方がない。男の子はカブトムシだと思って育てなさいとよく言われるが、自分自身や職場の男性医師を観察してみてよくわかるが、大人になっても不安定な生き物である。自分自身、よくここまで生きてこれたな、と神様やご先祖様に感謝している。それなりに長く生きている分、人生の役に立つと思うことも、ちょっとは知っているつもりなのだが、残念ながら伝えるすべがない。また、基本的に息子は父親のアドバイスなど素直に聞く生き物ではない。ところで、息子は①だけである。

妻①は、かなり綺麗な人だと昔も今も思うのだが、帰宅した私の姿を見るやいなや、流行りのアニメの竹筒を咥えた可愛い妹が敵と戦う時に鬼の顔に豹変するように、瞬時に恐ろしい鬼の表情に切り替わる。妻①は、いつのまにか鬼の血を体に入れられてしまったようだ。鬼になった妻を人間に戻す方法を、私が旅をしながら探すしかない。妻①よ、待っていてくれ。そういえば、秋のツーリングシーズンになったので、九州行きのフェリーの乗船予約をした。職場でよく話をする女医さんが、「私、奥様の気持ちが、なんとなくわかります」と、よくわからない事を言った。別の女医さんは、「ネズ子ちゃんは、鬼になってからも主人公の味方ですけどね」と言った。男性と女性は、お互い別の惑星の生き物のように、基本的には分かり合えないそうだ。ところで、妻は①だけである。

犬①はあいかわらず、私をみると吠えて威嚇する。前世では、いったいどんな関係だったんだ、オマエ。頼むから、いい加減、吠えないでくれ。犬も①だけである。