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腎臓内科医の診療日記㊶

今日は休日で天気はよいのだけれど、予想最高気温が39℃と天気予報アプリに表示されている。まだ朝9時だというのに、ほんの少し外を歩くだけで息切れしてくる。なんだか、今は人類の終末期で、このまま滅亡してしまうんじゃないか、という気さえしてくる。茹で(ゆで)ガエル現象という言葉があって、カエルはいきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れてゆっくり水温を上げていくと、逃げ出すタイミングを失って最後には死んでしまうという、環境の変化に対応する事の難しさを表す言葉として知られている。ただ、これは実は作り話で、実際にカエルを生きたまま茹でると、ちゃんと逃げ出すそうだ。このあたり、小学生の娘に夏休みの自由研究でやってみたらどうか、と提案してみようと思う。

私が子供の頃には、気温が35℃を超えたことなんて無かったんじゃないか、と思ってネット検索してみると、一瞬で当時の毎日の天気や気温をみられるページが見つかった。図書館で調べものをする小学生は、もう絶滅しただろう。私が10才を迎えた1983年8月の東京の気温は、最高気温30℃未満が12日、30℃以上~35℃未満が17日、35℃台と37℃台がそれぞれ1日で、35℃を超えた日が一応2日だけあった。ちなみに昨年8月は30℃未満が1日、30℃以上~35℃未満が19日、35℃台が6日、36℃台が4日、37℃台が1日という結果で、30℃未満の日がほとんど無くなり、35℃以上は11日に増えていた。確実に、茹でられてきている。宇宙には、茹でニンゲン現象という言葉があって、宇宙人の女の子が、父親に言われて夏の自由研究を頑張っているのかもしれない。

昨日、日が暮れてわずかに気温が下がってから、2人の娘が犬を散歩に連れていくというので、ついでに私も連れていってもらった。近くにある小学校の隣の道を歩きながら、なんとなく静かだな、と思った。この時期の週末は、例年なら盆踊りだった。盆踊りの時は、小学校の校庭にやぐらが組まれ、大勢の老若男女が色とりどりの涼しげな浴衣を着て、賑やかに集まっていた。無数の赤白の提灯が、やぐらの梁や四方に張ったロープに吊るされ、踊りの音楽や太鼓、屋台の電源用の発動機の音までが、祭りの雰囲気を盛り上げていた。遠くの夜空に、花火が上がっていた。それらの夏の行事は、昨年に引き続き中止された。予定されていた野外ロックコンサートが地域の医師会の意見で中止となり、オリンピックは政府が分科会を押し切って、かろうじて開催された。感染者が急増する一方で、重症者や死亡者はそれほど増えない。分科会の会長が、「オリンピックをやるということが、人々の意識に与えた影響はあるんではないか、というのは我々専門家の考えだ」と、茹でられたカエルのような発言をした。私は、ちゃんと逃げられるカエルであろうと思った。