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腎臓内科医の診療日記㉙

スマホでニュースのページを下の方に読み進めていくと、そのニュース記事を読んだ人の感想が、たくさん書かれている。ごく短い簡単なものもあれば、結構な長文の主張や体験談が述べられているものや、専門家っぽい人が書いた上から目線のコメントを見かけることもある。私は自分で書き込んだ事はなく、何の得にもならないのに、何でこんなに多くの人がコメントを書き込むのだろう、と不思議に思う事が多かった。見ず知らずの自分のツブヤキなんか、誰も興味が無いに決まっているし、特に誰かに影響を与える事もないだろうから、わざわざ書き込んだりする事は時間の無駄だと思っていた。こんなところに自分の内面を垂れ流して喜んでいるのは、露出狂の変態なんじゃないか、と以前友人が話していた事があったが、最近、そういう書き込みをする理由がなんとなくわかってきた。コメントのすぐ下に、「いいね」ボタンと、「私はそう思わない」ボタンがあって、それぞれ押された数が表示されており、自分のコメントに同意する人がどれだけいるか、一目瞭然になっている。大抵、「いいね」の数が圧倒的に多くて、「そう思わない」の数は少ない。たぶん適当に「いいね」を押す人が多いのだと思う。承認欲求というものは誰にもあり、自分の意見に他人が賛同してくれると嬉しい。意見を書き込むと、簡単に多くの同意を得られるので、その欲を満たすためのツールになっている部分はありそうだ。ちなみに、このブログ記事はちゃんと原稿料を頂けているが、どちらかといえば、私は変態である。

 

ところで、ロックダウン政策をとらずに、ある程度の高齢者の犠牲を覚悟したスウェーデンでは、その後、検査数の増加による見かけ上の感染者数増加はあったが、重症、死亡者数は減少の一途を辿ってほぼゼロとなり、国民は騒ぐことなく、マスクなしで夏休みを満喫している。もちろん経済面でも、スウェーデンはヨーロッパの中で最も影響が小さかった。ようやく最近、日本の情報番組でもそんな情報が流れ、これまでのウイルスに対する恐れ方や、過剰な自粛ムードに対する反対意見を目にするようになってきた。世界や日本の半年間のデータを、冷静に解釈をする人が増えてきて、ネット上でブツブツ言うしかなかった人も、少しずつ公の場で本音を言いはじめてきたし、恐怖をあおり続けるワイドショー番組について、別の番組のコメンテーターが問題提起するようになってきた。今は元気な若者が、弱い高齢者に感染させないよう配慮しながら、積極的に経済をまわしていかなければいけない時期である。ゼロリスク自粛が社会を崩壊させるのは明らかであり、そのことを考えれば、それなりの感染予防策をとって帰省や旅行をする者が仮に感染してしまったとしても、まったく責められるものではない。自粛を守り続けていれば、恐怖や不安にかられた人から「いいね」はもらえるかもしれないし、感染してしまったら魔女狩りにあうかの如く差別されるかもしれないが、理不尽な同意や非難には、いちいち反応しない方がよい。

 

GoToキャンペーンやお盆の帰省について、多くの知事や国民の反対意見がまだ目立つ中、政府は東京以外で予定どおり進める姿勢をとおしている。政府は「いいね」や「反対」の数を無視して、国民や社会を守るために優先すべき事を優先するようになってきた。ちょっと明るい兆しが見えてきたように思う。「いいね」「反対」の数など関係なく、時に多くの非難を浴びながらも力強く物事をすすめ、最終的に大切なものを守っていく。父親はそんな覚悟が必要だと思う。ナカナカいい事言うな、俺。今日も自宅に戻ると、いつものように妻からの冷たい視線がビシビシ突き刺さってくるが、気にしないことにするぜ.....そうそう、帰ったらすぐ手洗いとうがいだったな。洗面所で手を洗いはじめ、気配を感じて振り返ると、妻と娘が扉の向こうから、無言でじっとこちらを見ている。はい、ちゃんと石鹸つけて、時間かけて洗います。