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腎臓内科医の診療日記③

透析導入前の腎不全の患者さんは、透析が近くなってきたときに、「シャント」と言われるものを左右どちらかの腕に、手術で作成します。これは、手首のあたりで動脈と静脈の間に直径数ミリのトンネルを作って、血液の流れを短絡させたものです。手術後に徐々に静脈が太く発達して、表面から見やすくなっている事が多いです。透析の際には、たくさんの血液を透析器におくりこむ必要があるのですが、自然な静脈に針を刺す方法では血液が足りません。また、動脈に針をさすと量的には足りるのですが、深かったり細かったりで、難しいのです。「シャント」を作成しておくと、静脈の中を勢いよく血液が流れて血管も太くなるため、そこに穿刺することで大量の血液を確保して、透析が出来るのです。

誰が作成するのかは、地方によって異なる傾向もあります。この地方では透析開始前に通院している腎臓内科の医師が、そのまま手術を行う事も多いです。他には、血管外科の医師や泌尿器科の医師が作成する場合もあります。透析クリニックでは、そこに勤務する医師が手術する事も多いです。シャントの手術は大掛かりな外科手術に比べて、比較的短期間に技術を習得できるため、内科の医師でも作成技術を習得している人が多くいます。腎臓内科の医師が手術の面白さに目覚めて、自分は実は外科の方が向いていたかもしれないな、と思うことさえあります。

一般的には手術は大変というイメージがあるかもしれませんが、執刀している医師にとっては結構楽しい時間であったりします。料理や工作の楽しさに近いかもしれません。手術は大抵2人で行い、経験の浅い医師は熟練した医師とペアで手術を行います。施設によっては、医師と看護師の2人で手術を行うこともあります。私は自分が執刀するときは、好きな音楽をかけて楽しく手術をしています。中森明菜や渡辺美里などの80年代アイドルの曲をかけたり、古い洋楽ロックが好きです。以前は、映画イージーライダーのサウンドトラックが手術開始から終了までで聞き終わる、ちょうど良い長さでした。難しい血管の場合は、デヴィッドボウイのベスト盤の時間や、それ以上の時間を必要とする場合もあります。