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腎臓内科医の診療日記⑧

20年くらい前、研修医として働きはじめた初日、病棟のベテラン看護師から、患者さんに点滴を入れてくるように頼まれた。私は「点滴はまだ入れたことがないので、教えて下さい」とお願いすると、その恰幅の良い看護師は一緒に患者さんの所についてきて、こうやるんだよ、と腕をしばって消毒し、一瞬で針を入れた。私は「わかりました」と言って、次の患者さんに同じように針をさして、失敗した。隣で看護師がニヤっと笑った。

研修医2年目のある日、血管の細いおじいさんに点滴を入れることになった。3回くらい失敗した。隣に座っていた意地悪顔のおばあさんに「あんたは手つきがヌルイねー。おじいさんが可哀そうだから、他の先生に代わってちょうだい」と意地悪な顔で言われた。少し離れたところにいた1年上の先輩に電話をかけて来てもらった。私は1回くらい失敗してくれないかな、と思ったが、先輩は上手だった。クヤシイと思った。意地悪顔のおばあさんに「ほれ、みてみんしゃい。」と言われた。

 

透析患者さんは毎回2本の針をシャントに刺して、透析を行っている。シャントの血管は、手術をしてから時間が経つと太くなるので、そのぶん針を入れやすくなる。けれども、透析用の針は普通の点滴の針に比べて太いので、血管がまだ発達していない間は、刺すのが難しい。点滴や透析の針が血管にうまく入るかどうかは、針を刺すスタッフの技量と、患者さんの血管の太さなどとの兼ね合いで決まってくる。

 

透析クリニックでは、穿刺に慣れたベテランの看護師さんや技師さんが穿刺をする事が多いが、私が普段働いている総合病院では、穿刺は主に医者が行っており、私も十数年前に赴任してから数多くの穿刺をしてきた。最近は若い医者が増えて自分の出番は減ってきたが、若者が苦戦しているときには私が代わって刺すことになる。そのような時にうまく入ると、さすがですねとオダてられたりして気分がよい。しかし、失敗した若者が心の中でどう思っているかは、私が一番よく知っているのである。それでいいと思うし、自分には無理と諦めてクヤシがらない人は、うまくならない。