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腎臓内科医の診療日記⑨

日本で血液透析が保険適応になったのは1967年です。透析治療が広まる以前は、腎不全が進行すると尿毒症になって、そのまま亡くなっていました。それが透析治療の普及により、腎不全が進行しても生きていける時代になったのです。透析が始まってからの予後は人それぞれですが、10年以上透析を続けている方も普通にいますし、中には透析歴45年以上 という方もいます。週3回透析施設に通う手間はありながらも、それだけ延命できる治療法が広まったというのは、やはりとても画期的なことでした。

その後は透析膜や透析液、透析針の改良がすすみ、透析中に使用する薬剤も進歩し、透析合併症の予防治療も進んでいます。透析でどれだけ延命できるかという時代から、透析患者さんの生活の質をいかに改善していくか、という視点にかわってきています。

最近では、腎不全が末期状態になっても、透析なしで腎移植を行う患者さんも、増えてきています。私が研修医になった頃の話ですが、20台の女性の腎臓病が進行し、もうすぐ透析という状況になりました。透析の準備として、女性の左手首のあたりに、静脈と動脈を吻合する手術を行いました。丁寧に縫うように気を付けたのですが、左手首には数センチの傷がどうしても残ってしまいました。その後、尿毒症になって週に3回の透析が始まり、半年くらい透析生活を続けた後、お父様から腎移植をうけて透析を離脱しました。

 

以前は、腎不全が末期になったら一旦透析を始めるというのが常識で、腎移植を希望する人も透析をしばらく行ってから移植を行っていました。最近では腎臓病の早期から腎臓内科を受診される患者さんも多くなり、将来的な血液透析や腹膜透析、腎移植の話を、早いうちから相談していきます。移植を希望される患者さんには、早い段階で、移植を実際に行っている病院に相談に行ってもらいます。そうすることで移植の準備をスムーズに進められ、透析することなく腎移植を行う事が増えてきました。透析に要する時間(週に3回、1回3~4時間)や針を刺す苦痛、内シャントの手術などを経験しなくて済むようになったのは、やはり患者さんにとって大きなメリットと言えます。