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ホーム > 天野記念クリニック > 糖尿病の基礎知識 > 糖尿病と運動

糖尿病と運動

糖尿病と運動①

糖尿病の発症予防や血糖の改善に運動が有用であることは多く実証されています。運動することでエネルギーが消費され、糖が使われるため、血糖が下がります。また、運動することでインスリン抵抗性(インスリンの効きやすさ)が改善し、そのため血糖が低下します。しかし運動によるこの効果は3日以内で低下、1週間で消失すると言われていますので習慣的な運動が必要になってきます。運動しようとおもいたったらなら三日坊主では意味がないので、長く続けられる程度の運動量から始めましょう。継続は力なりです。

 

糖尿病と運動②

糖尿病患者の場合、糖尿病のみならず、高血圧、肥満、脂質異常症等伴っている場合が多く、運動することによってこれらの異常が改善されるとともに、血糖コントロールも改善されます。8週以上の運動療法を行った研究では体重減少は認められなかったにもかかわらず、血糖は改善したとの報告もあります。また糖尿病治療において運動療法は食事療法と組み合わせることによりさらに高い効果が得られます。このように糖尿病の治療においては食事や運動など生活習慣の改善が重要で、日常生活のなかで段階的に運動量を増やしていき、それを継続することが重要です。

 

糖尿病と運動③

運動はエネルギー代謝の面から無酸素運動と有酸素運動に分けられます。無酸素運動とは100メートル走、跳躍、砲丸投げのように短時間内に強い筋力を使う運動で、このとき筋肉に蓄積されているアデノシン三リン酸(ATP)からエネルギーが供給されます。有酸素運動は十分酸素が供給された状態での運動で、代表的な種目としては歩行、ジョギング、水泳等があげられます。有酸素運動では運動時間が長くなると脂肪が主たるエネルギー源となるので糖尿病の運動として必要なのは有酸素運動のほうです。しかし、毎日運動を行うとなると様々な種目を取り入れ、全身の筋肉を動かす運動を行うのが良いでしょう。

 

糖尿病と運動④

糖尿病の合併症の存在が強く疑われる場合、運動療法がかえって病気を悪化させることもありますので注意しましょう。心血管疾患の合併が強く疑われる場合、まずは詳しい検査が必要です。場合によっては心臓血管カテーテル検査をします。中等度以上の網膜症のある場合は急激な血圧上昇を伴う運動は避けましょう。重症網膜症のある場合は無酸素運動や身体に衝撃の加わる運動は避けるべきです。微量アルブミン尿や軽度の蛋白尿を有する患者は運動の強度が中等度以下の運動を行うべきです。蛋白尿が多い場合や腎機能が低下している場合は積極的な運動療法は避け、ゆっくり散歩するなどして日常生活における身体活動量を低下しないようにしましょう。下肢閉塞性動脈硬化症においては歩行運動が勧められていますが、重症例は禁忌です。重篤な末梢神経障害を有する患者では荷重運動は控え、水泳、サイクリング上半身運動などが勧められます。

 

糖尿病と運動⑤

運動による血糖の変化はそのときの代謝状態や運動の種類によりさまざまです。健常者では中等度の強度の運動を行った場合、血液中のブドウ糖は骨格筋に取り込まれて利用されますが、インスリン分泌の低下等により肝臓での糖産生が増加することにより血糖値はほとんど変化しません。糖尿病患者が同様の運動を行った場合、高血糖が存在するとともに運動中でもインスリンはさほど低下しないために肝臓での糖新生はあまり増加しません。そして骨格筋でも糖利用は増加するので運動中の血糖値は低下します。また、運動終了後においてもグリコーゲン合成やインスリン感受性の亢進により血糖値は低下すると考えられます。従って薬を使用している患者は運動当日から翌日にかけて低血糖を生じるおそれがあるので注意が必要です。

 

糖尿病と運動⑥

このように運動療法を維持することは心肺機能の向上や生活の質の改善のみならず、インスリン感受性や脂質代謝の改善、血圧の低下などのよい影響を与えます。糖尿病患者においては血糖コントロールの改善も認められます。糖尿病が生活習慣病と言われるのはこのためで、日々の生活において習慣として、運動することを取り込むことが大事です。